会計コラム IFRS到来 第5回:IFRS導入への大きな変化

今回のメルマガでは、HOYA(株)の平成23年3月期の連結包括利益計算書について、日本基準とIFRSの数字を見比べてみようと思っていました。(*1)

(*1)8月開催のIFRSセミナーで解説します。ご興味のある方は、セミナーにご参加ください。

しかし、新聞紙上等で報道がなされているとおり、IFRSの導入に向けた動きに大きな変化が生じています。そこで、今回は急遽内容を変更し、最近におけるIFRS導入の動向について述べていきます。

IFRSをアドプションするかどうかの意思決定は、アメリカが2011年に行う予定であったため、わが国では2012年に行う予定でした。つまり、アメリカの動向が、わが国の意思決定に大きな影響を及ぼすというわけです。

そこで、まずはアメリカにおける動向を整理し、その上でわが国の動向を整理しましょう。

1.アメリカにおける動向

アメリカでは、会計基準を作っているのはFASBという民間団体です。このFASBは、IFRSの作成主体であるIASBとともに、米国基準とIFRSのコンバージェンスのプロジェクトを行っています。その中でも、特に重要な内容として、金融商品、収益認識、リース会計の3つがありますが、これらに関するコンバージェンスのプロジェクトの終了を、当初予定していた2011年6月から2011年末まで延期することを発表しています。

また、アメリカにおいて、FASBが作成した会計基準に従うことを要求しているのはSEC(米国証券取引委員会)です。このSECが、2011年5月26日に、ある文書(スタッフ・ペーパー)を公表しています。そこでは、アドプションよりもコンバージェンスに傾いた様子がうかがえます。つまり、IFRSを米国基準としてそっくりそのまま採用(アドプション)するのではなく、IFRSを米国基準に取り込んでいくというコンバージェンスに近い内容が提案されています。また、移行期間としても、5年~7年という長い期間が例示されています。さらに、SECのシャピロ委員長は、2011年6月21日において、IFRSの採用に慎重な姿勢を表明するとともに、移行期間についても、少なくとも5、6年はかかるだろうと指摘しています。

つまり、アメリカでは、全体的にIFRSについて非常に慎重な姿勢になっているわけです。

2.わが国における動向

わが国では、HOYA(株)や住友商事(株)をはじめ、IFRSに積極的に取り組んでいる企業があることも事実です。

その一方で、各企業や業界団体等からは、昨年よりIFRS導入についてさまざまな慎重意見が表明されています。また、最近では、2011年5月25日において、新日本製鐵(株)、トヨタ自動車(株)をはじめとしたわが国を代表する企業より、「要望書」が提出されています。この「要望書」の中では、震災からの復興コストも考慮し、十分な準備期間を設けることが要望されています(ただし、IFRSの適用そのものに正面から反対しているわけではなく、適用の是非等について、早急に、かつ、十分に議論することも要望されています)。同様に、連合(日本労働組合総連合会)「2012年度連合の重点政策」(2011年6月)では、「上場会社の連結財務諸表に対してIFRS(国際財務報告基準・国際会計基準)を強制適用することを当面見送る方針を早期に明確にする」と述べられています。

このような動きを受け、2011年6月21日には、金融担当大臣より、少なくとも2015年3月期についてのIFRSの強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であっても、その決定から5~7年程度の十分な準備期間の設定を行う旨が表明されています。また、日本経団連(日本経済団体連合会)も、2011年6月29日に、上記「要望書」と同様の趣旨の意見を公表しています。

そして、日本経済新聞において大きく取り上げられていましたが、2011年6月30日の企業会計審議会(金融庁)においてIFRSに関する議論がなされています。企業会計審議会は、2009年に「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」を作成した審議会であり、この中間報告が、現在、世間で一般にいわれている「2012年に判断」「2015年から2016年から採用?」という内容の出所になっているものです。つまり、わが国の方向性は、この審議会の見解が握っていると言っても過言ではないでしょう。

さて、2011年6月30日の企業会計審議会では、慎重派と推進派のそれぞれから意見が出されているようですが、全体的に見れば、準備期間は5年から7年程度(よって、適用するのは、2017年~2019年ごろ)になりそうな情勢です。すべての上場企業に適用するのかどうかといった点も、まだまだ議論が続いています。いずれにしろ、まずは適用時期が延期になりそうですので、準備もじっくりとできることになりそうです。

公認会計士・税理士 清松 敏雄

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