会計コラム 決算早期化のポイント

 今回は、決算の早期化についてとりあげます。

 最近のわが国の開示制度の改訂は、基本的には2つの方向性を持ってなされてきました。

 ひとつは、開示情報の精緻化・正確化です。そのために、IFRSとのコンバージェンスも相まって、次々と新しい会計基準が作られたり古い会計基準が改訂されたりしてきました。10年少々さかのぼれば税効果会計やキャッシュ・フロー計算書があり、その後も、退職給付会計、減損会計、資産除去債務、過年度遡及など、リストアップするだけでこのメルマガが終わってしまいそうな量の新会計基準が作られたのです。また、内部統制監査の導入も、開示情報の精緻化・正確化のためのものと言ってよいでしょう。

 そしてもうひとつの方向性は、早期化です。こちらは、ASBJのような会計基準設定主体が求めたというのではなく、証券取引所や市場参加者が求めてきたものです。また、経営者の方々が、経営管理のために決算の早期化を必要とされることも多々あります。

 このように、最近の動向の2つの方向性は、精緻化・正確化を要求する一方で、早期化を求めていますが、本来はこの2つは相反するもののはずです。早くしようと思えば、正確さが犠牲になることも多いでしょうし、逆に、正確さを追求すれば時間がかかってしまうことも多いからです。

 とはいえ、実務的にはなんとかこの2つを両方とも追求することが求められており、正確さを犠牲にせずに早期化する努力が多くの企業でなされています。そのために多くの企業で重要になっているのが、開示までのプロセスの確認と、決算・開示資料の作成内容・担当の整理です。

 まず、開示までのプロセスの確認というのは、大きく分ければ単純で、という流れの中で、時間がかかっているのは何かを改めて確認する作業です。ここで重要なのは、「時間がかっている作業の『前のプロセス』が真の原因ではないか?」と考えることです。たとえば、③の連結決算に時間がかかっている場合、実は、連結決算そのものに時間がかかっているのではなく、単体の決算に関係する情報(債権債務の情報や取引の情報)の収集に問題があるのではないかと考えるわけです。決算は、個別であれ連結であれ、情報が整っていれば会計処理そのものにはあまり時間がかかりません。むしろ、集めた内容の確認作業や不備に対応する作業に時間が費やされていることの方が圧倒的に多いのです。「○○に時間がかかっている。よって、○○の担当者は怠慢だ」と考えずに、むしろ、前のプロセスとの連携にこそ改善の余地がある可能性が多々あるということです。

 このような前のプロセスとの連携の改善にあたっては、決算・開示資料の作成内容・担当の整理が重要です。どんな方でも、自身が行っている業務以外にも精通するというのは難しいことです。ですから、「後のプロセスでどんな作業をしていて、具体的にどのような情報が必要なのか」を把握するのは誰にとっても難解なはずです。そこで、決算・開示資料の作成内容や担当者を表などを用いて整理し、お互いにどのような情報を必要としているのかについて知識を少しでも共有しておくことが重要になるのです。

 今まですでに決算の早期化を進められてきた企業の方々は、1日早めるのにどれほどの工夫が必要かというのを痛感されているはずです。上記の内容は、早期化のための工夫の一例にすぎませんが、少しでも決算時の休日出勤や残業が少なくなるのに役立てていただければ幸いです。

公認会計士・税理士 清松 敏雄

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