会計コラム IFRS到来 第2回:包括利益は何を括っているのか?

 昨今、包括利益という用語をよく聞くようになりました。「包括利益の表示に関する会計基準」が公表され、平成23年3月31日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から包括利益を開示することが求められるようになったことが大きな原因でしょう。ご多分に漏れず、このような開示が求められるようになったのも、IFRSとのコンバージェンスの一環です。アメリカをはじめとして、海外では包括利益の開示はずいぶん前から行われているのです。

 では、包括利益とはいったいどのようなものなのでしょうか。「包括」というくらいですから、いろいろなものが含まれているはずです。そこで、今回は包括利益の中身を整理してみましょう。

 まず、包括利益は、「ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主も含まれる。」とされています。簡単にいえば、「純資産の変動額のうち、株主等との取引以外による変動額」というわけです。

 そして、包括利益のうち、当期純利益(損失)以外の部分を「その他の包括利益」といいます。つまり、図でいえば、赤色の部分が包括利益、そして、ピンクの部分がその他の包括利益です。結局、包括利益とは、上記の定義にもあるように、株主との取引(黄色の部分)以外によって生じた純資産の変動を一括りにしたものというわけです。

 

 また、簡単な数値で示すと次の設例のようになります。

 

なお、その他の包括利益の内訳には、その他有価証券評価差額金の増減、繰延ヘッジ損益の増減、為替換算調整勘定の増減等がありますが、このような内訳も開示することが求められています。

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会計コラム IFRS到来 第1回:不思議の国ニッポン?

 今年もプロ野球が開幕しました。有名選手の活躍も気になりますが、今年から「ツーボール・ツーストライク」というように、ボールを先に言っているのをご存じですか?
変だとかわかりにくいという批判もあるようです。しかし、野球が盛んな国々でストライクを先に言う国はどれほどあったのでしょう?
世界中を調べたわけではありませんが、どうやら日本オリジナルだった可能性が高そうです。

 同じことが会計でも起こっています。日本の会計は、20世紀の半ばに急速に整備されましたが、その時のルールの名残が今でも残っています。
たとえば、日本では固定資産売却損益を特別損益にしています。
しかし、国際的には特別損益の範囲は非常に狭く、たとえばアメリカでは、洪水が数年に1度起こる地域では洪水による固定資産の損害は特別損失になりません。
数年に1度起こるなら、全然「特別」ではないという感覚です。ましてや、有形固定資産の売却損益はもっと頻繁に生じますので、当然のごとく経常利益に含めます。
このような発想は世界的には普通であり、特別項目が多いのは日本オリジナルも同然になっています。

世界の人々から見れば、「ニッポンの会計は不思議です」と言われかねない点はいくつもあった(そして今でもある)のです。

 このような問題を受け、わが国でもこの10数年の間に一気に会計基準の国際化を進めてきました。
いわゆるコンバージェンスです。
そしてついにIFRSをアドプション(採用)しようとしています。IFRSは外圧だとか黒船だとか言う人もいますが、世界から見て「変だ」となると、それは文化ではなく「悪しき慣行」と言われかねない時代です。

坂本龍馬のように世界に目を向けるべきか日本基準を守るかは難しい問題ですが、実務家としては坂本龍馬を目指すしかなさそうです。
次回は、世界中に広まりつつあるIFRSについて、財務諸表の表示や包括利益といった日本基準との相違点を述べていきます。

 公認会計士 清松 敏雄

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会計コラム IFRS到来 はじめに

 日本でも2015年以降にIFRS(国際財務報告基準)の強制適用が予定されています。
このIFRSは、上場企業に限らず非上場企業にも影響があるのではないかと思われています。
そこで、IFRSの主なテーマ毎に 『やさしく』 解説していきます。

著者プロフィール

公認会計士 清松 敏雄(きよまつ としお)

東京大学経済学部後、青山監査法人(現 あらた監査法人)、株式会社ビジネストラストを経て、クオリティアカウンティング株式会社・清松公認会計士事務所を開設。
連結決算・内部統制・株式公開に関するコンサルティングに軸を置きつつ、IFRS対応や決算早期化業務にも従事している。

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